入学式

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入学式の様子

山本校長 式辞

春は希望の季節です。生きているものすべてが生気にあふれています。

この輝くような春の日にPTA会長様、同窓会会長様、後援会会長様はじめご来賓の皆様方のご臨席を賜わり、本校入学式を挙行できますことは、入学生はもちろん私たち教職員、在校生にとりましても大きな喜びでございます。ご臨席いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます。

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私たち教職員と在校生すべてが、皆さんを心から歓迎します。

皆さんは今日めでたく本校へ入学しました。これは皆さん一人ひとりの努力の成果でありますが、それとともにこれまで皆さんを育ててこられたご家族の方々、小学校・中学校においてご指導くださった先生方など、多くの方々のお力によるものであります。皆さんはこのことをしっかりと心に刻み、「感謝の心」をもって新しい生活を踏み出してください。

これからの6年間、あるいは3年間は皆さんの将来を方向づけるきわめて大切な時期です。本校でそうした大切な時期を生きる皆さんに、悔いのない学校生活を送ってほしいと願っております。その願いをこめてお話をしたいと思います。

皆さんが今いる麹町周辺は明治、大正、昭和の時代、非常に多くの文学者・芸術家がこの地に住み活躍された文化の香り高い土地です。私が住んでいた大阪には残念ながらそのような地はありませんが、一人日本を代表する歴史小説家がいます。司馬遼太郎です。

「花神」、「坂の上の雲」、「竜馬がいく」等で多くの人に愛される小説家です。その人が「二十一世紀に生きる君たちへ」という作品を残しています。まさに二十一世紀に生まれた皆さんへのメッセージです。ここでその一部を読ませていただきます。

 

君たちはいつの時代でもそうであったように、自己を確立せねばならない。

自分にきびしく、相手にやさしくという自己を。そして素直でかしこい自己を。

21世紀においては、特にそのことが重要である。21世紀にあっては、科学と技術がもっと発達するだろう。

科学・技術が洪水のように人間をのみこんでしまってはならない。川の水を正しく流すように、君たちのしっかりした自己が、科学と技術を支配し、よい方向にもっていってほしいのである。

いままで私は「自己」ということをしきりに言った。自己といっても、自己中心におちいってはならない。人間は助け合って生きているのである。

私は人という漢字を見るとき、しばしば感動する。ななめの画がたがいに支え合っている。そのことでもわかるように、人間は社会をつくって生きている。社会とは支え合う仕組みということである。人はたがいに助け合いながら生きているのである。

人間は決して孤立して生きられるようにはつくられていない。このため助け合うということが、人間にとって大きな道徳になっている。助け合うという気持ちや行動のもとのもとはいたわりという感情である。他人の痛みを感じることと言ってもいい。やさしさと言いかえてもいい。

「いたわり」、「他人の痛みを感じること」、「やさしさ」みな似たような言葉である。この三つの言葉は、もともと一つの根から出ているのである。根といっても、本能ではない。だから私たちは訓練をしてそれを身につけねばならないのである。

その訓練とは簡単なことである。例えば友だちがころぶ。ああ痛かったろうな、と感じる気持ちをそのつど自分の中でつくりあげていきさせすればよい。

この根っこの感情が自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。君たちさえ、そういう自己をつくっていけば、21世紀は人類が仲よく暮らしていける時代になるのにちがいない。

君たち、君たちはつねに晴れあがった空のように、たがたがとした心を持たねばならない。

『二十一世紀に生きる君たちへ』(2003年 司馬遼太郎記念館)より

 

以上ですが、皆さんもしっかり訓練して「いたわり」、「他人の痛みを感じる心」、「やさしさ」を身につけてください。

ところで、慶應大学ラグビー部はクラブスローガンを5つ持っています。そのうちの1つを紹介します。“Next One”です。いつも「未来を」、「次を」という意味です。

彼らはこの言葉にいつも次のプレー、次の試合が自分にとって最高のものになるように毎日毎日全力を尽くそうという思いを込めています。

Next Oneといえば、世界の喜劇王チャップリンが思い出されます。彼はロンドンの貧民街に生まれ、極貧の中で育ちました。「99%までが努力、1%が才能:この1%がよければうまくいく」という言葉で有名です。

チャップリンは晩年「あなたが今まで創った作品の中で一番よかったものはどれですか?」と聞かれたとき、彼は迷わずにこう答えました。“Next One”。

皆さんも一日一日の努力の継続で、自分の夢を追い続けてください。

終わりになりましたが、保護者の皆さまにお願いを申し上げます。

保護者の皆さまと私たち教職員は今日からここに並んでいる新入生の皆さんを「指導し、よりよく育てていく」という同じ仕事に取り組むことになりました。同じ仕事をご家庭と学校の両者で分担するわけですから、お互いに協力しなければ効果をあげることはできません。協力の基本はお互いの理解と信頼であります。私たちは、力を尽くしてご家庭の教育の理解に努めてまいります。保護者の皆さまにおかれましても、どうかご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

最後に新入生の皆さんの麴町学園生活が楽しく充実したものとなりますよう心から祈念して式辞といたします。

麴町学園女子中学高等学校 校長 山本三郎

Welcome Speech by Tetsuya Yasukochi, Special Adviser of English